最後は調心。これはそう簡単ではありません。沢庵宗彭(たくあんそうほう)和尚が『不動智神妙録』のなかで兵法の心として説いた「不動智」が、目指すところです。
これは心が四方八方、右左と自由に動きながら、一つのもの、一つのことに決してとらわれないことをいいます。つまり、総(すべ)てにのびのびとひろがった心です。そのとき、心はどこにも置かれず、どこにもある状態になります。これはだれでもできるわけではありません。私自身は、毎日の晩酌でほろ酔い気分になり、心の一切を解放したときに、その境地に近づきます(笑)。
気功的人間になるには、調身、調息、調心を実践した上で、もうひとつ大事なことがあります。それは虚空を意識することです。
以前書きましたが(6月28日号)、老いて死ぬ、その先には、虚空の存在が浮かび上がってきます。人は虚空から来て虚空に帰るのだと私は考えています。気功の本質は、その虚空と交流することなのです。それができる人こそ気功的人間です。
※週刊朝日 2019年10月18日号