源泉徴収制度も日本人をお金から遠ざけています。税金・社会保険料を会社が給料から天引きするので、サラリーマンはいくら取られているのかを知らないままです。自営業にならない限りお金を触らないですむ社会構造があるわけです。
卓郎:そうした文化や社会構造のせいで、皆がお金に無知になってしまった。その結果、金融の専門家に頼めばお金を増やしてくれるという、大いなる思い違いも生まれました。
多くの人が短期間で確実に稼げる方法があると思いこんでいますが、そんなこと、この世のどこにもありませんよ。金(ゴールド)が1グラム当たり5千円台半ばの高値をつけていますが、20年前は1千円程度でした。10年、20年という長いスパンで考えて、初めてリターンが出るのです。
康平:長く持つ、つまり長期投資ですね。そこは大賛成。あと大切なのは「分散」です。株式ならいろいろな銘柄に投資するなどして、リスクを減らす手法です。その点、投資信託(投信)は分散投資されているファンドを低価格から買えるので便利。私は「米国株」への投資、それも個別銘柄ではなくニューヨーク・ダウやS&P500といった株価指標に投資するインデックスファンドを持っていれば十分だと思います。ただし、買う際に手数料がかからない「ノーロード」と言われる商品限定ですけどね。
米国1国では分散されていないと思われるかもしれませんが、米国企業の売り上げの地域別構成比を見ると世界中で稼いでいることがよくわかります。ITバブル崩壊やリーマン・ショックなど幾度も危機を経験していますが、30~50年の長いスパンで見ると両方ともずっと右肩上がりです。
卓郎:私は投信は知恵がない人が買う商品だと思っています。買うときに手数料がかかるものが多いし、保有している間ずっと信託報酬を取られる。ある程度の知識があれば、同じものを自分で作れます。株式なら20~30銘柄買えば株価指数とほぼ同じ値動きをします。ファンドマネジャーにお任せが間違いです。
康平:自分の力で分散しようとすると、まとまった資金が必要になります。ノーロード商品はすでに千本以上ありますよ。信託報酬も年0.2~0.3%ほどに下がっています。
(聞き手・構成/本誌・首藤由之)
>>【後編】「年金崩壊時代お金とどう向き合う? 森永卓郎・康平の親子の備え方」へ続く
※週刊朝日 2019年10月11日号より抜粋