経済アナリストとして知られる森永卓郎氏が、同じく経済アナリストとして金融界で活躍し独立した長男とマネー本を出した。これからは年金が下がり続け、老後資金が足りなくなる。厳しいマネー環境をどう生き抜くべきか、森永親子に「日本人とお金の本当の話」を聞いた。
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──『親子ゼニ問答』(角川新書)を8月に出しました。
卓郎:シリーズ的に僕の本を出している編集者が「次は何を?」と聞いてきたので、「親子本はどうだ」と提案したんです。
康平:私は金融教育を普及させるために昨年、会社を立ち上げました。創業後はインターネット放送などからも、お金を題材に親子出演をもちかけられるようになりました。
卓郎:康平はマネーの仕組みは一応わかっているんです。だけど、倫理面で“金融村の住民”になってしまっている面があった。そこは、本の中でも厳しく批判しています。
康平:共著というと大体、同じ思想の人間が役割分担して書く例が多いんですけど、本著では終始対立しています。
卓郎:ちゃんとした金融教育をしないとだまされるという点は一致している。対立部分は、それがわかるような見せ方ができています。
──今年は老後不安が再びクローズアップされた年になっています。金融庁の報告書をもとに「老後資金2千万円問題」が騒ぎになり、年金の財政検証でも厳しい将来像が示されました。
卓郎:金融庁の報告書には、世間を脅して投資のほうに資金を振り向けさせようという金融村の魂胆が入っていました。それが選挙もあって年金不安にまで話がいってしまったのです。私は報告書自体が全然“ぬるい”と思っています。
なぜかというと、65歳から95歳までの30年間しか必要資金を計算していないから。いま女性は2割の確率で100歳まで、5%弱の確率で105歳まで生きる可能性があります。つまり、40年分考えないといけない。
年金はずるずる減っていくのがわかっているのに、夫婦で20万円程度の年金がずーっと続く前提になっています。これらを考慮すると、私の計算では老後資金の不足額は65歳で5780万円にまで膨らみます。普通のサラリーマンにとって、「そんなにためられるわけないじゃん」という世界なんです。