お坊ちゃんと音楽の組み合わせはボサノヴァも同じだ。小ぎれいな身なりの若者がイパネマ海岸でガールフレンドと戯れつつギターを爪弾き、それが「新しい波」を意味するボサノヴァになった。ラブ&ピース、アメリカのウェストコーストのヒッピー文化にしても、大半は中流階級出身の若者たち、フランス・ヌーベルバーグの旗手、ゴダールにしても父親は医師、母親は銀行家の家系だと言う。
彼らのステージに、何より演奏している自分たちが一番愉快だとでもいうような「アマチュアリズム」を感じた。世故にたけない、純粋に音楽を楽しむ学生サークルのノリなのだ。
「今日は誰から誘われたの?」
終演後、楽屋で松任谷正隆さんに訊かれた。
「佐野史郎さんです。実は吉祥寺仲間なもので」
「どうりで。リハーサルが吉祥寺だったのはそれだったのか。しかし、(自宅から)吉祥寺まで遠かったなぁ(笑)」
正隆さんに紹介され、鈴木茂さん、林立夫さん、小原礼さんと握手した。
横浜からの帰り道、ジャパニーズロックの革命家たちと握手をしたのだと思い返し、改めて緊張してしまった。ちなみに、「佐野史郎 meets SKYE with 松任谷正隆」夜の部にはユーミンが駆けつけたのだそうだ。
※週刊朝日 2019年10月4日号