野崎幸助さん(右)と妻
野崎幸助さん(右)と妻
田辺市の調査報告書の一部
田辺市の調査報告書の一部

 全財産を故郷、和歌山県田辺市に寄付するという遺言を残し、昨年5月に不審死した「紀州のドン・ファン」こと資産家・野崎幸助氏(当時77)。本誌は田辺市が野崎氏の全財産を調査した内部資料の全文を入手した。

【独占入手】田辺市が作成した報告書

<故野崎幸助氏による遺贈に関する報告書>と題する、田辺市が作成した全12枚に及ぶ文書。野崎氏の遺言書に対し、どのように対応するかをまとめたものだ。遺言書が残された経緯について、野崎氏と40年来の交友があったBさんはこう語る。

「遺言書を預かったのはCさんです。2番目の奥さんと別れてほどない時期に野崎社長が『死ぬことはないが万が一のため』と遺言書を送ってきたそうです。昨年、社長が急死し、そういえばと捜したら、遺言書が出てきた。Cさんから相談を受け、見せてもらいましたが、筆跡も間違いなく野崎社長のものでした」

 遺言書とともに印鑑証明書も同封されており、遺言書に押印されていた印鑑と同じだったという。

 著書『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』(講談社)では、多額の資産があると公言していた野崎氏。田辺市が調査したところ、野崎氏の遺産は13億5千万円だった。

 報告書を読み進めると<相続財産>として野崎氏の土地・建物の不動産、預貯金、株などの有価証券、自動車、現金などで26億8千万円。30億円に近い金額となる。

 野崎氏が財を築けた理由の一つは、貸金業の成功にある。報告書では、貸金業で未返済となっている融資、金利の過払いなどが3億円以上と記されていた。また、不動産は土地と建物合計で約3億円の評価となっているが、不動産鑑定士の実勢価格では約3100万円と一桁違う評価だった。マイナス面を差し引いた数字が13億5千万円となるのだ。

 野崎氏には亡くなる直前に結婚した55歳年下の妻、Sさんがいる。報告書には<野崎氏の相続財産が配偶者によって費消されるおそれが高いと考えた>として相続財産管理人を選任したと記されている。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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