その後、京都大の大学院に進み、平安女学院短大、京都精華大の教員を経て、93年から東京大で教えるようになった。2011年に退職する。17歳の上野さんはこう問いかけている。

「学問という、一つの理性的、体系的な世界へ眼を見開かせてほしいのである。我々の人間としての純粋な知識欲を刺激してほしいのである」(二水新聞)

 19年、上野さんは東京大入学式祝辞で、「純粋な知識欲」がどうあるべきかについて、一つの答えを出してくれた。

「大学で学ぶ価値とは、すでにある知を身につけることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています」(19年4月12日)

 17歳の問い、いまの答えを見ると、上野さんの知に向かう姿勢はぶれていない。そして力強い。

 上野千鶴子さんが少女時代に抱いた知的好奇心は、その後、社会学者として一つひとつ満たされてきた。なかでもジェンダー分野での研究成果は、次の世代に多くの影響を与えた。そして、上野さんはいまでも著書、講演などをとおして、新しい知を社会に広く発信している。

 2021年から入試制度が変わる。上野さんがかつて「くだらなすぎる」と断罪した「受験勉強」は改善したか。英語民間試験導入で迷走する文部科学省には今でも難問となっている。

週刊朝日  2019年10月4日号

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