放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「飲食店の経営」について。
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2012年に飲食店を始めて、7年になる。去年まで「ちゃんこ屋 鈴木ちゃん」という店をやっていました。約6年。先日、ようやく税理士さんと話して、その店の清算がほぼほぼ終わりまして。
お店は中目黒駅(東京都目黒区)の近くで、3階建て。力士を辞めた人を応援するという思いで、社員も4人ほど雇っていました。家賃は90万円超。毎月、家賃と給料とバイト代で、ランニングコストが結構かかります。
オープン後、飲食関係の知り合いが見に来てくれて、ざっと計算してくれました。
「ここだと1カ月で700万円稼がないと、黒字になっていかないですよ」
月700万円はかなりの金額です。オープンは9月。最初の月はいい感じです。そして10月、11月と鍋が合う季節になっていったので、まあまあ好調でした。が、始める前に誰も教えてくれなかったのです。日本人が夏にこんなにも鍋を食べないことを。
テレビ業界の人って、夏でも鍋を食べたりします。その感覚でいたのですが、見事にカレンダーと気温に左右される。4月のお花見シーズンを過ぎて5月に入ってくると、目標の700万円には遠く及ばず。400万円くらいの時もあり。そうなると、300万円近くのマイナスになっていくのです。売り上げが下がると、社員同士の空気も悪くなってきたりして。あの頃の店は、同じ業界の関係者優先でやってたりもして。それもダメな理由の一つ。
なんとか堪えようとしていたのですが、6年目でついに閉店を決定。そして、先日、6年間の赤字額が6千万円を超えていたことが判明しました。6千万円!?都内に余裕で家が建つ。何してんだ。
でも、この6年の間に、この店で学べたことはありました。そして、同じ中目黒に小さな店を出しました。ほぼ「ワンオペ」でいけるような店。そこで決めたのです。たまに来る知り合いより、常連さんを大事にしなきゃいけないなと。そして鍋をウリにはせずに、季節に合わせたメニューを出す居酒屋に。