前半38分、逆転のトライを決める松島(C)朝日新聞社
前半38分、逆転のトライを決める松島(C)朝日新聞社
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後半28分、自身三つめのトライを決める松島(C)朝日新聞社
後半28分、自身三つめのトライを決める松島(C)朝日新聞社

 アジア初となるラグビーの第9回ワールドカップ(W杯)日本大会が9月20日に開幕した。日本(世界ランク10位)は東京スタジアム(味の素スタジアム)での開幕戦で、ロシア(同20位)に30―10と勝利し、4トライ以上で得られるボーナスポイントを獲得する最高のスタートを切った。

【写真】三つ目のトライを決める松島

写真特集:ラグビーワールドカップ2019開幕戦「日本対ロシア」

 その立役者となったのが、3トライを挙げた26歳のウイング松島幸太朗(サントリー)だ。

 序盤は硬さが見られ、ロシアに先手を許した日本。そんな窮地を救ったのが松島だった。

「しっかり外のスペースをみつけて、それを(内側の)仲間にも伝えることができた」

 前半11分と同38分に中央から右サイドに回ってきたボールを受けると、自慢のスピードで相手を振り切ってトライ。さらに後半28分には相手のキックミスを突いたカウンターから40メートルを独走し、ボーナスポイントの獲得につながる自身三つ目、チームとして四つ目のトライを挙げた。

 身長178センチ、体重88キロ。バックス選手のなかでも、決して大柄ではない。だが、一瞬のスピードに加え、巧みなステップ、相手に捕まっても簡単に倒れない体幹の強さが松島の武器である。

 最後のトライの場面でも相手選手に一度はつかまれたものの、スピードを落とすことなく3、4人を置き去りにするようにゴールラインに飛び込んだ。

「外側にボールが渡れば、相手にとってはフェラーリが突進してくるようなもの」

 試合後、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチは高級スポーツカーに例えて松島を称賛したが、疲労のたまった終盤にあれだけのスピードを見せつけられたロシアとしてはなすすべがなかったはずだ。

 松島はジンバブエ人の父と日本人の母の間に、南アフリカの首都プレトリアで生まれた。小中高のほとんどを日本で過ごし、神奈川・桐蔭学園高校3年時には全国高校大会優勝を経験した。

 その後は日本の大学に進まず、南アフリカの強豪クラブ「シャークス」のアカデミーに2年間在籍。南アフリカU20(20歳以下)代表候補にまでなった。だが、「日本代表でW杯に出たい」と2014年に帰国し、トップリーグのサントリーなどでプレーしてきた。

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