催促OL(C)榎本まみ 
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コツは謝り過ぎないこと(C)榎本まみ
コツは謝り過ぎないこと(C)榎本まみ

 新卒で督促業界に入ったOLが、毎日、怒鳴られ、脅されながら、年間2000億円の債権を回収するまでを描き15万部のベストセラーとなった「督促OL修行日記」(文藝春秋刊)。その後も都内のコールセンターに身をひそめ、スキルと経験を積んでパワーアップした督促OLがクレーマー、カスハラ(カスタマー・ハラスメント)に逆襲する術を伝授する。

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*  *  *

「大変申し訳ございません!」
「ご迷惑をおかけしました!」
「お怒りごもっともでございます!」

 今日も私の働くコールセンターには、様々な謝罪の言葉が飛び交っている。

「バカヤロー! なんでこんなに金がかかるんだ!? 詐欺じゃないのか!」
「お前らのところは本当にサービスがなってない!! なんで書類を送ってもらうのに手数料がかかるんだ! 他社は無料だ、タダにしろ!」

 開口一発響いてくる怒声に、怒られ慣れているとはいえど緊張で身が固くなる。いきなり怒られてしまったら人はどうするだろうか、私はまず反射的に謝ってしまうタイプの人間だった。特に従業員と顧客という関係であればなおさら、多くのひとはまず「申し訳ございません!」と謝罪をするのではないだろうか。

 けれど、ここで反射的に謝ってはいけない。お客様とのパワーバランスの駆け引きは、ここから始まっているのだ。

 矛盾したことを言うが、実は謝りすぎるとクレームは逆に長引く。その理由は2つあって、一つは謝罪の言葉は繰り返すことによってその効果が薄れてしまうということだ。

「申し訳ございません、申し訳ございません、申し訳ございません」と通り一遍の謝罪を繰り返していると相手はくどいと感じてしまう。

 それに「こいつ、ただ謝ればいいと思ってるのか?」とだんだんといら立ってくる。すると相手の怒りはどんどん膨らみ、当然クレーム対応時間が長引く。怒りを収めるための謝罪が、逆効果を生んでしまうのだ。

 そしてもう一つは優位性の問題だ。先にこちらが謝る、もしくは過剰に謝ってしまうことにより相手に優位性を持たせてしまう。つまり相手に交渉の主導権を握られてしまうのだ。

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反射的に謝る癖とは?