熊谷さんによれば、わざとあおり運転をする輩は全国各地に存在するという。
「私が以前あおられたケースでは、前方の加害者の車が車線の上をわざと走行していた。こちらが車線変更すると合わせるように前に割り込んできた。こうした『故意犯』にはいつどこで出合うかわかりません」
実際にデータ上でもそれが見て取れる。
各都道府県公安委員会が昨年1年間に免許停止の行政処分とした事案は、過去最多の42件だった。2014年からの4年間は年間4~7件しかなく、6~10倍超に急増した。前方との車間距離を詰めすぎる道路交通法の車間距離保持義務違反の摘発も1万3025件で前年からほぼ倍増している形だ。
死亡事故に発展する恐れがあるあおり運転の社会問題化を受けて、警察庁は昨年1月、免許停止の行政処分適用と取り締まりの積極化を求める通達を出している。
道交法では、車の運転をすることが著しく交通に危険を生じさせる恐れがある運転者を「危険性帯有者」と規定している。その場合、最長で180日間の免許停止処分にすることができる。運転免許の行政処分は、交通違反での点数の累積による実施が一般的だが、警察庁は交通トラブルから暴力沙汰になるようなケースで危険性帯有者の規定活用を求めている。
もし私たちが道路上であおられたらどうすればいいのか──。
企業のクレーム対応などの研修や講演会などの事業を運営する「トークナビ」の代表で、フリーアナウンサーの樋田かおりさんは「あおられてもとにかくイラッとしないことが大切。心が弱っている、不安定など人間の生存本能としての怒りからあおる行動を取っているんだな、と考えると腹も立たなくなるでしょう」と説く。
前出の熊谷さんは自らの体験をもとにこう話す。
「あおられてイラッときてしまうのは人情。ただし、これ以上いったら大事故、大事件につながるという見極めが大事だ。ここから一歩踏み出すとこんな大変なことになると想像力を働かせると冷静になれる」