近江のエース・林優樹。118球で完投し、被安打6、失点6だったが、自責点は1だった(撮影/遠崎智宏)
近江のエース・林優樹。118球で完投し、被安打6、失点6だったが、自責点は1だった(撮影/遠崎智宏)
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近江の主将で捕手・有馬諒。試合後、林の投球を「今年最高のピッチングをしてくれたと思う」とたたえた(撮影/写真部・加藤夏子)
近江の主将で捕手・有馬諒。試合後、林の投球を「今年最高のピッチングをしてくれたと思う」とたたえた(撮影/写真部・加藤夏子)

 第101回全国高校野球選手権大会第6日(11日)は、春の関東王者と近畿王者が激突する今大会随一の好カードがあった。東海大相模(神奈川)―近江(滋賀)で、近江は予想外の苦戦を強いられ、初戦敗退となった。

 一回、近江は先発の林優樹のテンポのいい投球と遊撃手・土田龍空(りゅうく)の軽快な守備で、先攻の東海大相模を三者連続遊ゴロに仕留める。

 甲子園球場にかすかな動揺が走ったのは二回だ。2死走者なしから6番の遠藤成(じょう)の打ち損じた打球を、捕手・有馬諒が一塁へ悪送球した。

 滋賀大会では無失策のチーム。しかも、多賀章仁監督が「今年は有馬のチーム」と絶大の信頼を寄せる主将が失策を記録した。

 この後、遠藤は二盗を決め、さらに三盗を狙ったが、有馬が刺して無失点で切り抜けた。

 しかし、三回も2死走者なしから土田が失策。四回は2死二塁から再び土田が失策し、ついに先制を許してしまう。

 「Aggressive Baseball(攻撃的な野球)」を掲げる東海大相模の積極的な走塁が、近江の選手たちに圧力を与えていた。

 「あんなに一塁まで全力疾走してくるチームは、滋賀ではあまりなかった。走塁からのプレッシャーは、キャッチャーも野手もあったと思いますね。準備が不足してたので急に来られたとき、乱れてしまったんだと思います。ミスをしないチームだからこそ、一つのミスからがたがたといってしまった部分があったんじゃないかな、と思います」(有馬)

 五回にもヒットエンドランで追加点を許し、六回は2失策と2単打などで3失点。九回もバント安打で出た走者が失策で本塁を踏み、滋賀大会計26回無失点だった林が、この日計6点を失った。

「正直強いチームでした。隙のない野球をずっとしていて、自分たちもエラーを誘われた」(左翼手・住谷湧也)

 一方で、打線は東海大相模の先発右腕、遠藤の前に決定打が出ず、七回までわずか2安打。八回に押し出し四球で1点奪うのが精いっぱいだった。

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想定していたのは左投手