写真はイメージ (撮影/大崎百紀)
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漫画家の弘兼憲史さんらも人生の終盤の友人整理を勧める
漫画家の弘兼憲史さんらも人生の終盤の友人整理を勧める

「友だち100人できるかな」と胸を躍らせたプレ小学生のような気分で、老いても暮らしていたら……あなたは、疲れます! 年をとったら、本当に心許せる友と過ごせる時間と、関係を大切にしたい。そのためにも、ゆがんだ関係や、ストレスまみれの友は思い切って「切った」ほうが良い。節目の「還暦」が一つのきっかけになるようです。

【写真】漫画家の弘兼憲史さんらも人生の終盤の友人整理を勧める

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 実業家の紗栄子さん(仮名・61歳)は、還暦になったのを機に、親しかった友人3人との付き合いを「整理」した。

「3人ともみんな頭が良かったし、楽しみ上手。おいしいお店とか、情報量が半端なく、会話のテンポもいいのでついつい20年以上付き合ってしまったわ(笑)」

 こう紗栄子さんは振り返る。それまでは、自分の考えとちょっと違うなというタイプでも、楽しさ優先で付き合ってきた。

 クーポンを利用したり、安いバスツアーを選んだりする「倹約友人」には、「この年なんだから、やたらとケチケチしなくてもいいのでは?と思っていた」。

 いつも人の陰口を言う友人とは、「一緒にいると自分まで陰口を言っているような気分になって罪悪感があった」。

 人の気持ちを察しないずうずうしかった友人には、「私の大切な友人に対して何かずうずうしいことを要求してしまわないか?といつもハラハラしていた」。

 そんな3人との友人関係を終わりにして、心がすっと軽くなった。そんな紗栄子さんの人生の軸にあるのは「正しさ」だという。

「うそをつく、物事を大きく盛る、人を利用する、という人が嫌いなんです。そんな人生の『軸』が、年を重ねるにつれ、明確になってきたと思います。それを揺るがすような人が、自分の世界にいてほしくない。これが、私の友人断捨離の基準。友人イコール自分、友人は自分の一部ですから」

 還暦を機に価値観の合わない友人を捨てた今、「自分の人生の中に、違和感のあるものがなくなった。自分の心の芯ができたというか、グラつかなくなった。これが友人を捨てた私が感じる最大のメリットです!」

 美容家の夏織さん(仮名・75歳)も、還暦を過ぎてから「捨てた」友人が3人いる。仲の良い付き合いを続けていたが、年齢を重ねて「なんか価値観が違うな」という気持ちがふくらんできた。だからお別れを決意したのだそうだ。

 夏織さんが「捨てた」女友達は、魅力的で楽しい人だった。しかし、自分の思いどおりにならないことがあると、夏織さんの大切な友人の前でもすねたり、わがままを言ったりする。
 いやだなと思っても「私のほうが年上だし」と、10年以上我慢してきた。

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