一回表2死二塁で、遊撃内野安打を放つ国学院久我山の宮崎(撮影・遠崎智宏)
一回表2死二塁で、遊撃内野安打を放つ国学院久我山の宮崎(撮影・遠崎智宏)
 国学院久我山高校の尾崎直輝監督(撮影・遠崎智宏)
 国学院久我山高校の尾崎直輝監督(撮影・遠崎智宏)

 国学院久我山(西東京)の選手たちが宿舎に戻ると、拍手が沸き、歓声が上がった。尾崎直輝監督、選手ともに興奮冷めやらぬ様子だった。

【写真】選手に間違われる?29歳の尾崎直輝監督がこちら

 第101回全国高校野球選手権大会第3日(8日)の1回戦。2013年夏の優勝校、前橋育英(群馬)とのシーソーゲームを7―5で制し、春夏通算6回目の出場で初勝利を手にした。

「幸せでした」

 尾崎監督は、そう漏らした。

「緊張は全くなく、楽しかったです。もう一回、校歌を歌いたいです」

 29歳。今大会、平成生まれの監督として今大会初勝利を挙げた。

「試合にいっても、『監督はどこですか?』と、選手に間違われることが多かった。宿舎の近くで素振りをしていたら、近所の人に『何番打者?』と声をかけられた」

 そう冗談を交えながら、勝利を噛み締めた。前橋育英のベテラン・荒井直樹監督を相手に堂々の采配。試合後は携帯電話が鳴り止まず、祝福のメッセージが次々に届いた。

 攻守の要である4番で捕手の宮崎恭輔(3年)も試合後、満面の笑みを見せた。1点差に追い上げた七回表、なお2死二塁で、カウント2―2から中前へ同点の適時打を放った。

「打席に入る前に、応援が耳に入ってきた。打った後も冷静だった」

 その言葉通り、二塁走者が生還する送球の間に二塁を陥れ、次の高下耀介(3年)の中前への適時打で勝ち越しのホームを踏んだ。

「次も大事な場面で一本打ちたい。欲をいえば、ホームランを打ちたい」

 勝ち越し適時打を放ったエース・高下は、西東京大会では打率1割台と苦しんでいた。だが、「神宮球場の方が暑かった」と暑さに慣れたためか、この日は3安打3打点と本来の力を発揮した。

「西東京大会でも声援がすごくて背中を押されることが多くて、助けられました。チャンスで回ってきても凡打が多くて迷惑をかけていたので、打てて良かった。(悲願の甲子園1勝について)期待に応えられて嬉しい」

 三塁側アルプススタンドは応援団の赤色で染まり、ほぼ満員。「応援がすごかった」とファンや大会関係者が漏らすほどで、全国から卒業生やファンが集まった。

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試合開始に間に合わないはずだった大応援団