1軍復帰に向け、調整を行う中日の松坂大輔投手。監督として西武ライオンズの新人時代から松坂投手を見てきた東尾修氏が復活を期待する。
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中日・松坂大輔の2試合目の実戦登板となった6月14日のウエスタン・リーグ、阪神戦(甲子園)をテレビでチェックした。“おっ、この形で臨めれば悪くないのでは?”と思えたのが、投球フォームに無駄な力が入っていない点だ。
大輔本人がどう思うかは別にして、私は大輔を器用な投手だと思ったことがない。西武監督として初めて生で見た1999年1月の新人合同自主トレのキャッチボールでも左足首の硬さが気になった。だが、この硬さこそ、武器であった。すべてが柔軟に使えていたら、そして下半身から上半身に理にかなった力の伝えられ方をしていたら、もっときれいな回転の真っすぐになっていただろう。バットごと、グシャッと押し込む剛球というべきか、一球一球、それこそ回転軸が違うと思える球こそ、彼の持ち味だった。不器用だからこそ生み出せる球質というべきか。
手先も超一流といえるほど器用ではない。だから、制球だって抜群なわけではない。だが、私は彼が若い時から「ミットの後ろまで突き抜ける感覚のストレートを投げなさい」と話してきた。彼をオンリーワンたらしめる直球。そして小さくまとまらせないためだった。「20歳代前半で完成したらつまらないぞ」と言い続けたことも覚えている。変化球に頼った投球だけはしてほしくなかった。
だが、35歳を超え、何度も肩を痛めてきて、もう直球の押し込みでは通用しない。何か、ようやく体全体の力が抜けたかな。故障から明けた時は、誰しも故障前の状態に近づけたいと考えるものだ。そうしないと球威なども一気に落ちていってしまうから。ただ、個人差はあれ、以前の直球は投げられないとどこかで悟る。さらに、腕を振り続けることで回復が中6日では間に合わなくもなってくる。その時にできるのは、省エネである。