「平均寿命が60歳だったころには、老後資金をためるという考えは家計にはありませんでした。寿命が20年以上延びた今、リタイア前の老後資金の準備は家計の常識になっています。今後は、さらに寿命が20年近く延びるというのですから、もう一段、家計の常識が変わっていくはずです」
とはいえ、家計の改善には、「収入を増やす」「支出を減らす」「運用してお金を増やす」の三つの組み合わせしかない。
「家計変貌」の一つとして有力視されているのは、長く働いて収入を増やす策だ。FP協会の会報の特集も、「75歳まで働くライフプランニング」だった。伊藤宏一専務理事が言う。
「元気な高齢者が増えており、年齢は8掛けぐらいで考えるのがちょうどいい。日本老年医学会なども、『高齢者は75歳以降』とする新定義を提言しています。70代前半は社会を支える側になるべきです」
確かに、働くことによる家計改善の効果は大きいようだ。夫と妻がともに75歳までパートで年間100万円稼ぐとすると、たちまち問題は解決してしまう。妻が100歳まで生きても、1500万円を超す貯蓄が残るのだ。
何歳まで働くかはともかく、お金が足りなくなる「長生きリスク」があることはしっかり認識するべきだ。そして、まずは自分の家計が「100年時代」でどうなるかを試算してみてほしい。
「気づき」があれば人間は変われる。対策はそこからでも遅くはないはずだ。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2019年6月7日号