――結婚して51年になるけい子さんは、菅原さんの人生で「もう一つの」道を想像できない存在である。
カミさんには、感謝してもしきれません。介護させるためにいっしょになったわけじゃないのにって思うとつらいけど、ひと言も文句を言わずに世話をしてくれる。
甘やかすだけじゃないのが、ありがたいですね。
着替えるときは、わざと部屋からいなくなるんですよ。手伝ってもらえば5分でできるんだけど、ひとりだと1時間ぐらいかかっちゃう。でも、自分でやらないと回復につながらないですからね。
――デビューして50年、さまざまな苦難を乗り越えてきた。まだまだ引退するつもりはない。
「聞いてくださるみなさんのために、がんばるだけです」と言えば、きれいにまとまるかもしれない。でも、それではどこかうそが混じってしまいます。
まずは自分自身が「歌えることの幸せ」をかみしめているのです。年齢を重ね、浜口先生が亡くなった年を超えたことで、先生の哲学が少しは理解できるようになった。
ぼくらの歌を聞いてくれる人がいる限り、ちょっとでもマシに歌えるようにがんばります。歌を聞いた人が喜んでくれたとしたら、うれしい。自分も、たぶん弟も、歌をやってきてよかったと、今、いちばん強く感じてます。
大きな病気をしたことで、家族や兄弟のありがたさを、深く感じてもいます。悪いことばかりでもないように思います。
(聞き手/石原壮一郎)
※週刊朝日 2019年5月31日号
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