楽屋を訪ねると、すごく喜んでくれたという。
「そのとき、言葉をしゃべるのは頭を使うけど、歌だと覚えてるものが、自然にバッと出てきて大丈夫なんだよって言ってました。昔からとても元気なイメージの方でしたから、思うように動けないところはさぞ悔しかっただろうなぁと思いますね」
浅田さんと希林さんは、バリにあった秀樹の別荘を訪ねたことがあった。ただし、家主の秀樹は不在。
「滞在もホテルじゃなくてその別荘で(笑)。『ごめんね、オレ行けなくてさぁ』って言う秀樹に希林さんが、『いいんだよ、あんたいたらどうせ気ぃ使うんだから』って。借りてるのにその言い方?って(笑)」
浅田さんと希林さん、そして母親役の加藤治子さん(故人)の3人で、秀樹オススメの伊豆の温泉に泊まったことがあった。その夜、突如、秀樹が顔を出した。
「ちょうど秀樹のお父さんが亡くなって、お通夜のはずなんですよ。自分が紹介したところだからって、広島から伊豆までわざわざ駆けつけてくれたんです。こんな大事なときに!ってみんなで驚いてたら、『いやいやいや、いいんだよ。親父はもう逝っちゃってるわけだし、姉貴とかもいてくれるから大丈夫』って。料理もおいしいし楽しんでるって言うと、『そうなの?よかった!』って無邪気な笑顔で言って、そのまま広島までとんぼ返り」
最も印象に残るエピソードは、秀樹が亜星さんに吹っ飛ばされ骨折したときだと浅田さんは言う。
「バコーン、ゴロゴロゴロ……って落ちていって起き上がってこなくて。すぐ病院に行ったのですが、そのあとのシーンをつながないといけない。秀樹が病院から戻ってから撮影を再開したのですが、『この野郎!』って起き上がってきたときには腕を吊ってて。全然つながってない!(笑)」
希林さんが企画し浅田さんが主演した映画「エリカ38」では、浅田さんは、20歳以上年齢を詐称し、男たちから大金をだまし取る悪女を演じている。6月7日公開の本作が、希林さんの遺作となった。
「最後にすごいギフトをいただきました。いまごろ秀樹たちとワイワイやってて、『こっちに来ても忙しいのよ~!』と言ってる姿が目に浮かびます」
(本誌・太田サトル)
※週刊朝日 2019年5月31日号