没後1年、初のオールタイムシングル集が発売され、歌手としての実力が改めて高く評価されている西城秀樹さん。1974(昭和49)年放送開始の人気テレビドラマ「寺内貫太郎一家」で共演した二人に「素顔の秀樹」の思い出を聞いた。
【写真】「寺内貫太郎一家」で共演した小林亜星さんと浅田美代子さん
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■「高い音楽性 日本一の歌手」小林亜星
「当時から大変なスターでしたからね。とても忙しくて、セリフも現場に来てパッと覚えて、すぐ本番やって。そしてまた次の現場へという繰り返しだから、大変だったでしょうね」
と、「寺内貫太郎一家」主演で作曲家の小林亜星さんは、息子・周平役の秀樹のことを振り返る。
一番の“名物シーン”は、貫太郎と周平の、本気の取っ組み合い、殴り合いの親子げんかだ。
「本気でけんかしないと、演出家の久世光彦が『そんなんじゃ駄目だ』って怒るんですよ。終われば仲いいんですが、殴り合ってるとお互い自然と頭にきますから、迫真の演技になりました。あるとき、僕が秀樹を庭の外に突き飛ばしたら、そこに釘が飛び出した板があって。手に大けがをしてしまったんです。そのときは、『お前の大事なところ、引っこ抜くぞ』と書かれた恐ろしい手紙が山のように届いて、もう、ブルっちゃいました(笑)」
亜星さんにとって秀樹は、一音楽家として尊敬する存在でもあったという。
「日本でナンバーワンを争うような音楽性の高い歌手だったと思います。ドラマの中でミヨちゃん(浅田美代子)と毎週歌う場面がありましたが、そこでは役になりきって、あまりうまく歌いすぎないようにしてた気がしますね。当時はアイドル的な人気が先行して、歌手としての実力がなかなか正当に評価されにくかったように思います」
秀樹の音楽性、表現力を当時から評価していた亜星さんだったが、秀樹に曲を提供する機会には、なかなか恵まれなかった。
1999年。思いは届く。テレビアニメ「ターンAガンダム」の主題歌と挿入歌を亜星さんが担当。歌い手として、秀樹を指名した。