刑務所から貸与・支給される日用品のことを「官給品」というが、歯ブラシやカミソリ、下着など押しなべて品質が良くないという。そのうえ、支給頻度も少ない。歯ブラシは、使い捨てのようなものが月に1本支給されるだけ。毛先がすぐに広がってしまうので、自費で購入しようとすると、1本181円(市場調査価格は93~106円)。カミソリの交換も2カ月に1度だから、そりにくくなっても使い続けるしかない。購入すれば、4617円も負担することになる。
パンツやランニングシャツなど下着類の官給品は、出所者の使い古しが貸与される。新品を求めれば、男性用パンツならばサイズによって、702~1404円(市場調査価格はトランクスで313~529円)もかかる。
前出・川下弁護士がこう語る。
「家族からの現金の差し入れがないなど社会との関係が切れた人は、刑務作業で給付される『作業報奨金』の範囲で賄うしかありません。けれども、みんな総じておとなしい。刑務所は高齢化が進んで、社会福祉施設のような状態です。無銭飲食や万引きをくり返して、刑務所を出たり入ったりしている人もいます。だから、刑務所は食べられるだけありがたいと思っている人が少なくない。嘆かわしいことですが、人権救済の申し立てをした人の処遇が良くなることはありません。かえって刑務官からにらまれるだけです」
法務省によれば17年度の作業報奨金の月額は、1人当たり平均4340円。熟練度に応じて金額は増えていく。ただし、報奨金は全額を日用品購入に使えるわけではないようだ。やりくりは相当に厳しい。
前出・元受刑者の男性がこう話す。
「入所したての見習工だと、作業報奨金の“時給”は6円くらいで月額1000円にもなりません。報奨金での日用品購入には制限があり、優遇措置のランクによって月額の2分の1とか3分の1とかしか使えません。残りは釈放時に受け取ることになっています。13年当時のことですが、私の報奨金は月額3779円で、その半分が使えました。お金が余っても翌月繰り越しはできないから、4000円近くもする運動靴は買えませんでした。文具も自費購入しなければなりません。でも、手紙を出す場合は切手と封筒、便箋は2枚くらい支給されます」