田中:教員採用も見直したい。大学が力をつけるためには、世界中からより良い人材を採用して、拡大再生産するしかない。「あの教員は著名だから採用する。研究だけしてくれればいい」というのはもう通用しない。
ロ:1人の立場を過度に尊重すると、組織が保守的になってしまう。教員が競争する環境をつくらないといけない。
田中:人材の採用は全て公募にするべきと主張している。複数の人を推薦してもらう場合や、一本釣りの方式もありえるが、それでは知っている人材の中で良い人を選んでいるだけです。こうした改革は強権を発動するのではなく、多くの教員と価値観を共有して進めていきます。
◆ライバル慶應の存在
ロ:大学が力を伸ばしていくためには、ライバルの存在も必要です。
田中:慶應義塾大に人気で負けていると言われるが、ムキにならなくていい。ある雑誌に「慶應のほうが人気」と書かれたが、実力の比較は互角だった。大事なのは競争です。
ロ:教育や研究の質で競うことはいいことです。早大は政治学・国際関係学の分野で世界46位になっている。イエール大は政治学ではアメリカでトップ大学と位置づけられていたことがあった。それがスタンフォード大に抜かれた。スタンフォード大は数年前に数字を使った科学的な分析手法を重視した時期があった。イエール大は比較的、伝統的な方法を重視していた。互いに刺激を受けて進化しています。
◆“ラブ治”はウェルカム
記者:学生から「ラブ(愛)治」という愛称で呼ばれて、親しまれているようですね。
田中:東洋英和女学院大にいた当時(1989~94年)にそう呼ばれていて、それ以来あまり呼ばれていなかった。昨年、総長選に出たころから再びそう呼ばれるようになったが、ウェルカムです。スマホやツイッターの使い方がわからないとき、学生に教えてもらうのですが「学生に教わる姿勢がいいですね」と言われたことがあります。
ロ:大学のトップがメディアで積極的に発信し、学生から親しまれたりするのは大切なこと。私たちも見習いたい。権威や立場を使わない指導力に期待します。
(構成/本誌・吉崎洋夫、緒方麦)
※週刊朝日 2019年3月29日号