世界が求める人材輩出に向け、早稲田大の改革を断行する田中愛治総長。医学部構想やライバル慶應について、米国の名門・イエール大のフランシス・ローゼンブルース教授と語り合った。
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田中:世界が大きく変化している中で、変革しないと取り残されるという強い危機感がある。早大が世界で輝くためには改革が不可欠です。
取り組みの一つに医理工連携のさらなる推進と医学部構想がある。現在、医学部の教育・研究は医学博士だけでは不十分。電子顕微鏡や人工心臓、AIによる診察など技術が高度化し、理学博士や工学博士、さらには情報科学の専門家もいないと教育も研究も診療もできない。単科医大はそうした人材を持つ総合大学と組めば新しい展開が可能だ。医学部がなく、それ以外の分野が全てそろっている大学の典型が……。
ローゼンブルース:早大ですね(笑)。経済学、法学、政治学、理工学、文学などを網羅する総合大の強みもありますね。
田中:医療経済学、医事法、医療行政学、倫理学など必要な医学教育は全て提供できる。対等に組むお相手の単科医大の具体的な話はないが、日本や世界の医学に貢献できるならば、積極的に考えていきたい。
ロ:ただ、医学部を絶対に持たなくてはいけないということではないと思います。アメリカの一流大学が全て医学部を持っているわけではない。例えば、プリンストン大にはない。メディカルスクール(医師養成の専門職大学院)はとてもコストがかかり、経営は簡単ではない。共同研究を重ねていくことも意義があると思います。
◆見直したい教員採用
田中:これからは研究を背景とした教育に力を入れ、世界で活躍できる人材輩出をしていきたい。早大創設者・大隈重信は「一身一家、一国の為のみならず。進んで世界に貢献する抱負が無ければならぬ」と言っています。
ロ:世界が求めているのは、膨大な情報の中で適切に判断できる人材です。少し前のアメリカでは数学ができる人が重視され、ウォール街に集まった。金融市場の動向を予測するために、数学のアルゴリズムを使うからです。しかし今は、他の人が作った方程式を使いこなす能力ではなく、自分で判断して新しいものをつくる創造力が求められています。
田中:アメリカのトップスクールの一つであるイエール大ではどのようにして人材を育てるのですか。