最近、歯周病と認知症の関係について、新聞などで見聞きする機会が増えました。実際、歯周病は認知症の原因になるのでしょうか? だとすれば、治療や予防をすることで認知症予防はできるのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人は約15%、認知症の前段階とされる軽度認知障害を入れると65歳以上の4人に1人以上が相当するといわれています。そして近い将来は3人に1人が相当するようになるという推計も……。
高齢社会の中で増え続ける認知症。これをどう予防するか、どうしたら悪化させずにすむかは、誰にとっても関心事です。そんななか、歯周病対策が認知症対策の一助になるのではと期待される研究結果が出てきています。
認知症と歯周病の関係については2013年、海外の研究でアルツハイマー病の患者の脳から歯周病の原因菌である「Pg菌」が見つかったことが、話題になりました。アルツハイマー病の患者10人のうち、4人の脳からPg菌が見つかり、同じ年齢で認知症ではない10人の脳からは全く検出されなかったのです。
その後、国内外でマウスを使って歯周病菌の認知機能への影響を調べるさまざまな研究がおこなわれました。あらかじめアルツハイマー病に罹患させたマウスを、歯周病菌を投与する群と歯周病菌を投与しない群に分けた結果、歯周病菌を投与して作った歯周病のマウスは、そうでないマウスに比べて認知機能が低下したり、脳内にアルツハイマー病特有の炎症や老人斑が認められたりという報告が相次いで出てきました。
さらに、こうしたアルツハイマー病特有の脳の異常を引き起こす物質が、歯周病菌から生成される可能性もわかってきました。
「カテプシンB」という酵素はその一つで、老人斑の生成や脳の炎症を引き起こす働きがあります。九州大学大学院歯学研究院の武洲(たけひろ)准教授(神経免疫学)の研究グループが発見したもので、歯周病のマウスでこの酵素が増えていることに着目したのです。培養皿上でもこうした過程の再現に成功しました。