東京都・公立福生病院で、人工透析治療の中止を希望した女性患者が1週間後に死亡した問題で、東京都は病院への立ち入り調査を進めている。日本透析医学会はガイドラインに抵触する恐れがあるとして、近く、病院に立ち入り調査する方針だという。週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2019」では、人工透析の病院選びについて、東京女子医科大学病院血液浄化療法科教授の土谷健医師と東邦大学医療センター大森病院腎センター教授の酒井謙医師に取材している。ここでは、その一部を抜粋して紹介する。
【図版】「血液透析」「腹膜透析」「腎移植」の種類と特徴はこちら
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腎臓の機能が十分でなくなった場合、その機能を肩代わりする治療が腎代替療法。人工透析はこのうちの一つだ。
人工透析の導入原因は多い順に(1)糖尿病(2)慢性腎炎(3)腎硬化症。高齢化や生活習慣病の増加により維持透析を受ける患者数は年々増えている。2016年で32万9609人となっている(日本透析医学会統計調査)。
人工透析には血液透析と腹膜透析がある。腹膜透析は欧米では普及しているが、日本では約3%と少ない。日本の透析導入の平均年齢は70歳前後で、腹膜透析をおこなう病院が限られていることから、この方法を知らない患者も多い。
さらに腎代替療法には腎移植がある。さまざまな治療手段の中から患者に合った最良の方法を選ぶことが、生涯にわたり生活の質につながる。そのためにも、病院選びは重要だ。
18年度の診療報酬改定でこれらの腎代替療法を総合的に取り組む医療機関には、診療報酬が新たに加算されることになった。関連学会が作成した資料に基づき、腎代替療法について十分な説明をおこなっている病院に「人工腎臓導入期加算1」が、さらに加算1の施設基準を満たし、腹膜透析の患者の管理や腎移植に向けた手続きを実施しているなどの要件を満たしている病院(届け出制)には同加算2がつく。
導入期加算2について、東京女子医科大学病院血液浄化療法科教授の土谷健医師はこう言う。
「加算2がある病院は腹膜透析を含む、腎代替療法を総合的におこなっている病院といえます」
東邦大学医療センター大森病院腎センター教授の酒井謙医師は、こう話す。
「腎移植については同じ加算2でも移植手術はやらず、専門病院に紹介するところもあります。もちろん、こうした病院も重要です。詳しい内容は直接、主治医に聞くといいでしょう」
酒井医師は日本透析医学会専門医がいることも大事だという。
「ただし、数の差にはあまりこだわらなくていいと思います。日本透析医学会では一つの病院に1人専門医がいればクオリティーが確保できると考えています。なお、腎臓専門医も常勤していることが望ましいです」