東京の研究会から間もなく、皮膚がんの一種である悪性黒色腫(ほくろのがんと呼ばれる。別名:メラノーマ)の診断精度はディープラーニングが皮膚科医を上回るという研究成果が発表されました (Annals of Oncology, 29, 1836–1842, 2018) 。
この研究内容を簡単に説明しましょう。ダーモスコピーという、虫眼鏡のように拡大して観察できる機械で撮影したほくろと悪性黒色腫の画像を使って診断した研究です。
まず画像のみで診断した場合、皮膚科専門医はメラノーマを正しくメラノーマと診断した割合(診断感度)が86.6%であったのに対し、ディープラーニングは95%でした。
一方、ほくろをほくろと診断した割合(診断特異度)は、皮膚科専門医で71.3%なのに対し、ディープラーニングは63.8%でした。
この結果からいえることは、ディープラーニングは皮膚科専門医よりメラノーマの見落としが少ないですが、ほくろをメラノーマと誤診してしまう可能性も高いということです。
さて、この研究には続きがあります。
患者さんの詳細な情報を追加したうえで、もう一度診断テストを行います。その結果、皮膚科専門医のメラノーマを正しくメラノーマと診断できる割合(診断感度)は上昇し88.9%であったのに対し、ディープラーニングは同程度でした。
一方、ほくろを正しくほくろと診断できる割合(診断特異度)は、皮膚科専門医が75.7%なのに対し、ディープラーニングは82.5%でした。
つまり、患者さんの詳細な情報を追加したうえでの画像診断では、ディープラーニングはメラノーマを見逃さないし、ほくろを間違ってメラノーマと誤診することも少ないという結果になりました。
この論文は研究レベルでの報告ですが、実用化されれば少なくとも、ほくろと悪性黒色腫の鑑別において皮膚科専門医よりディープラーニングのほうが優れているということになります。