大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
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ディープラーニングという新しい技術の登場は、医療現場を大きく変える可能性がある(写真:getty images)
ディープラーニングという新しい技術の登場は、医療現場を大きく変える可能性がある(写真:getty images)

 AI(人工知能)による画像診断で、がんを見分ける技術が開発されています。その技術が進むと、医師は必要なくなるのでしょうか? 京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が、AIについて語ります。

*  *  *

 私が小中学生の頃、授業時間にこっそり映画を見せてくれる先生が何人かいました。洋画好きの音楽教師は大きなスクリーンで「ターミネーター2」を上映。生徒全員が「デデンデンデデン」と自発的に歌った楽しい授業をいまでも覚えています。

 この映画がきっかけで、エアロスミスというバンドをはじめて知りましたし、ツーブロックの髪形がかっこいいと思いました。そして、AIを怖いと感じました。「ターミネーター2」は、自我を持った「スカイネット」と呼ばれるコンピューターと人類間の核戦争をモチーフとしています。核戦争を引き起こしたスカイネット。これは将来AIが引き起こす可能性もあると、警鐘を鳴らす専門家もいます。

 医師は基本的に理系ですが、全員がコンピューターに強いわけではありません。特にAIの分野はこれまで、映画の中の遠い世界の出来事として私は捉えていました。それが突如、身近な存在となったのが、3年前に東京で行われた研究会です。

 私はその会に、がん免疫療法の講演を依頼され参加していました。自分の発表も終わり、ほかの講演を聞いていた中にAIを応用した医療研究がありました。

 そこではじめてAIを勉強することになります。現在、AI分野が盛り上がっているのはディープラーニング(深層学習)の開発によるものです。ディープラーニングは、画像を何万枚も学習することで、これまで人間の目では識別できなかった特徴やパターンまで区別することができます。

 例えば、試験管の中でがん細胞に変化していく過程を人間の目では正確には区別できないのに対し、ディープラーニングを使えば高い確率で見た目のみで区別することが可能です。

 画像を用いたパターン認識が得意なディープラーニングにとって、皮膚疾患は絶好の応用分野です。

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メラノーマを正しく診断できる割合