実はこうした部分にこそ、病院間で差が出る。特に副作用が出たときの対応には違いがあるとされている。この点をふまえて病院を選ぶことが大事だろう。
手術はその件数が実績を裏づける代表的な指標だ。薬物療法では今回、それに相応する指標として治験(医師主導の治験は含まず、厚生労働省が新薬の効果や安全性を確認し、承認するための製薬会社主導の治験に限定)の実施件数を聞いた。神奈川県立がんセンター腫瘍内科部長の酒井リカ医師はこう言う。
「多くの治験を抱えている病院はそれだけ担当の医師に専門的な知識や実力があり、患者さんのための支持療法(副作用を軽減するための治療)や副作用対策などのサポート態勢が充実しているといえます」
一方、外来での治療件数は病院のホームページなどで確認できることが多い。
「一番の指標はこの外来での抗がん剤治療件数だと考えます。薬物療法に力を入れている病院では延べ数で年間1万~2万件以上の治療を実施しているところもあります」(酒井医師)
愛知県がんセンター中央病院薬物療法部部長の安藤正志医師は、「治験数がいい病院の指標になる」としたうえで、こう言う。
「治験には薬の投与方法や投与量を薬の効果や副作用を見ながら決定する第I相(段階)、対象とするがんに絞って有効性と安全性をみる第II相、新しい薬の治療と標準治療を比較し、効果と安全性を検討する第III相があります。第III相はより多くの患者さんに参加していただく必要があり、この治験数が多い病院は、それだけ多くの患者さんを診察していることを示唆しています」
いい病院の最も大事なポイントとして、両医師が挙げるのがやはり、副作用対策の充実だ。
薬物療法では複数の薬を組み合わせる治療などもあり、治療の種類は全がんで100種類以上といわれる。
さらに分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は従来の抗がん剤と違う副作用が出やすい。特に免疫チェックポイント阻害薬では、数は少ないが重篤な副作用が起こりうる。副作用に対しての素早い対応が求められる。
「いい病院」では今回、免疫チェックポイント阻害薬(PD‐1阻害薬のオプジーボ、キイトルーダ)を投与した実患者数を調査した。
「投与実患者数はいい病院の指標になります。たくさん使用していると必ず副作用を起こす患者さんが出てきます。そこで対応した経験がその後の対策にも生かされます」(酒井医師)