放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「虐待の兆候が見えたときの行動」について。
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子供への虐待のニュースは後を絶たない。聞くたびに、周りの人は気づくことができなかったのか? なんとかできなかったのか?と思う。が、もし自分の周りで「あの子供、もしかして虐待されているのかも?」と思った時、自分は何か行動できるのか?
今から数年前のこと。僕の仕事仲間でもある男性Aさんから聞いた話。Aさんは結婚して子供もいるのだが、ある日、Aさんが奥さんから言われたらしい。「ねえ、Bさんって前に一緒に仕事してたよね?」と。Bさんは女性で、以前、Aさんと一緒に仕事をしたことがある。奥さんは言った。「私の友達の子供が塾に通っているんだけど、そこにBさんの子供も通っていてね、なんかね、その子が、お父さんに強くゲンコツされた、帰りたくないって言ってるって」と。Bさんは再婚している。その再婚相手の旦那さんが、子供にゲンコツをしたと。
その話が出たのが一度ではなく、しかも家に帰りたがらない。そこで周りの保護者は思うわけです。これってもしかして虐待してるんじゃないか? Bさんが気づかないところで、旦那さんが子供に暴力をふるっているんじゃないか?と。その話が、Aさんの奥さんのところに回ってきた。奥さんはAさんに言ったそうです、「Bさんに電話して話してみてよ」と。
Aさんは思ったそうです。「えーーーーー!?」と。それっていくらなんでも人の家庭に足突っ込みすぎじゃない? 親友ならともかく、仕事仲間だったくらいで、それいきなり電話するのは、どうなんだろうと。
躊躇(ちゅうちょ)していたのだが、奥さんが何度も言ってくるので、思い切ってBさんに連絡を入れたらしい。Bさんに勇気をもってその話をした。「もし誤情報だったら本当に申し訳ないんだけど」と。
すると、すでに、塾に通っている子供の保護者たちが、児童相談所などに連絡を入れて、Bさんの子供は児童相談所に保護されている状態だったのだ。つまり、嘘ではなかった。