甘い言葉にご用心 (c)朝日新聞社
甘い言葉にご用心 (c)朝日新聞社

 米軍人などを装い、SNSで知り合った50代女性らから約880万円をだまし取った詐欺の疑いで、福岡県警などがナイジェリア人とカメルーン人の計4人を逮捕した。いわゆる「国際ロマンス詐欺」と呼ばれる手口だが、日本人のシニアの独身女性が狙われやすいというのだ。

「戦場に行く兵士のサポートをしているとか、仕事についていろいろと教えてくれました。私の知らない世界なので、興味が湧いてきてしまいました」

 本誌の取材に重い口を開いたのは、離婚歴のある59歳の独身女性。この女性は一昨年秋、フェイスブックをきっかけに、マイクと名乗る男と知り合った。45歳で米カリフォルニア在住。沖縄の基地に所属していたということで、片言の日本語を操っていた。

 身の上話も弾むようになったある日、中東の戦場にいるような写真が女性の元に届いた。そこに写るマイクは背が高く、なかなかのイケメン。

「『I LOVE YOU』とメッセージがきました。会ったこともないのに、まるで恋人同士のようで……」(女性)

 戦地での任務が終われば米国に帰れるからカリフォルニアへ来てほしい、と誘われ、ついに「marryme(結婚しよう)」とプロポーズされた。

 だが1カ月後、毎日のように続いていたやり取りが、3日ほど途絶えた。もしや戦禍に巻き込まれたのではないかと不安を募らせていた女性にメッセージが届いた。

「ケガをした。病院に運ばれた。重傷だ」

 心配で何度も返信すると、「軍医」を名乗る人物から「マイクは戦地で大ケガをした。今、ロンドンの病院にいて大変だ」とメッセージが入ったのだ。女性は入院費など120万円を指定の口座に送金した。

「マイクからケガの具合が悪化して、200万円ほど追加してほしいと……」

 異変に気づいた友人に詐欺ではないかと指摘され、ネットで検索すると、マイクとばかり思っていた写真の男は別人だと判明。ようやくだまされていたことに気づいた。弁護士に相談したが、海外にいて本名も不明では手の打ちようがないと告げられ、泣き寝入りするしかなかったという。

 甘い言葉をささやかれたら、疑ってみてから行動を起こしても遅くはない。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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