一方、ファンもスタジアム周辺で何時間も飲み続ける。「今日の日本のプレーはすばらしかったな!」と声をかけられた。仲がよさそうな男性3人組、それぞれ異なる遠方から来ていると聞き、いつも一緒に観に来るのかと尋ねたら笑われた。「いまここで知り合ったんだよ!」。ラグビーとビールはここまで人の垣根を取り払うのかと、またもや驚かされた。

 日を改め、今度はイングランドのトップリーグ・プレミアシップの試合会場へ。ここでは試合前に、会場内の個室や広間で、優雅に食事やお酒を楽しむ人々も見かけた。「ホスピタリティ」と呼ばれるこのシステムは、海外では一般化しており、主に企業が接待などの目的で席を押さえるそうだが、W杯日本大会でも導入されるというから楽しみだ。

 晴天とあって、スタジアム周辺は、ビールを楽しむ人々で立錐の余地もないほど。よく見ると、ビアカップに2種類あることに気づいた。地元チームのブリストル・ベアーズと、対戦相手エクセター・チーフス、それぞれのマスコットが描かれたものだ。大人たちは贔屓のチームのカップを手に、子どもたちは無料で配られる両チームの旗を手に掲げて、応援していた。

 試合が終わっても、コンコースのバーコーナーには変わらずビールを求める列ができている。ファン同士が仲良く飲みながら語り合い、時に歌う。異なるビアカップを持っているから敵味方関係なし、まさにノーサイドだ。その群衆のなかを、スーツに着替えた選手たちが、挨拶をしながら通り抜けていく。「いい試合だったよ!」「あのタックルは最高だった!」、ファンは彼らに遠慮なく話しかけ、選手は気さくに、時には写真撮影やサインに応じる。その距離の近さに驚くが、それだけファンに支えられているということなのだろう。とりわけ各チームの下部育成組織・アカデミー出身の選手たちはチーム愛が強く、ファンも10代半ばから見守ってきた彼らをかわいがるというから納得だ。試合終了から2時間近く経過しても、スタジアムは楽しそうな声であふれていた。

暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ
次のページ