スタジアムの内外に、いくつものビールスタンドが立ち並ぶ。試合開始の数時間前から集まって楽しむ人々で立錐の余地もないほどだ (写真=Shu Tomioka)
スタジアムの内外に、いくつものビールスタンドが立ち並ぶ。試合開始の数時間前から集まって楽しむ人々で立錐の余地もないほどだ (写真=Shu Tomioka)
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「イングランドラグビーの家」という看板のかかったパブ「ザ・サン」。試合開始の数時間も前からビールを手にする人々で賑わう (写真=Shu Tomioka)
「イングランドラグビーの家」という看板のかかったパブ「ザ・サン」。試合開始の数時間も前からビールを手にする人々で賑わう (写真=Shu Tomioka)

「日本にもラグビー文化を根づかせたい」。ラグビー日本代表の姫野和樹選手は、「週刊朝日」のインタビューにそう語った。競技や試合ではなく、その“文化”とはいったい何を指すのだろうか? 今年9月のラグビーワールドカップ(W杯)開催を前にその謎を解くべく、ラグビーの“母国”イギリスを訪れた。

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「Beer! Beer! Beer! ビールをたくさん飲むことだよ、ラグビーの文化は!」
 
 試合だけではなく、文化も含めたラグビーの楽しみ方を学びたいと伝えると、イングランド史上最高のフッカーと呼ばれるピーター・ウィラー氏はそう言って笑った。1970年代から80年代にかけてイングランド代表として活躍し、英国ラグビー協会の次期会長とも目される大物の意外な回答に戸惑っていると、「言葉で説明するのは難しいが、グラウンドに行けば、きっと意味がわかる」。そのウィラー氏の言葉に背中を押され、“現場”へと向かった。

 ロンドン在住の日本人チーム“ロンドン・ジャパニーズ”が親善試合を行なうグラウンド。大学進学のため先月ロンドンに出てきたという高橋シュウヤさん(19)は、育ったウェールズで6歳からラグビーをプレーしてきた。15人すべての選手に、瞬時の決断と行動が求められる点が面白いと語る。「それに、試合中は全力で戦うけれど、終了のホイッスルが鳴れば、握手をして一緒に飲むんだ。それもまた、ラグビーの重要な部分だと思う」。

 その言葉通り、グラウンド脇にはたくさんのビールや酒が用意されている。話の途中、イングランドのユニフォームを着た“敵”が、陽気にシュウヤくんの肩を叩いて通り過ぎていった。

「イングランドラグビーの家」という看板のかかったリッチモンドのパブ「ザ・サン」は、まだこの日の試合開始まで3時間はあるというのに、昼日中からビールグラスを手にする人々で賑わっていた。

60代の男性客2人は、以前別の試合会場で知り合い、いまでは年に数回、ともに試合を見る仲だ。ラグビーのいちばんの楽しみを尋ねると、「1日中飲むことさ。こうして試合の前にパブで飲んで、試合中も飲んで、試合が終わったらまたここで飲む(笑)」。ちなみにそれぞれ何杯くらい飲むのか聞いたところ、すべてに「たくさん!」と笑った。

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