口の中の歯周病菌がからだにも悪さをする……。そんな衝撃的な話を聞くことが増えました。果たして本当なのでしょうか? だとすれば、その対策は? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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「最近、血糖値、測っていますか?」「糖尿病の薬を飲み忘れたりしていませんか?」
歯科医師の私ですが、近年、患者さんにこのような質問をすることが増えてきました。その理由は、歯周病と糖尿病に深~い関連があるから。実は歯周病の患者さんには糖尿病を持っている人がとても多いのです。
糖尿病の合併症といえば網膜症、腎症、神経障害が知られていますが、実は歯周病もその一つ。糖尿病がある人はそうでない人の2.5倍、歯周病になりやすいことが明らかになっています。血糖値が高い状態が続くとからだの免疫力が低下するため、口の中の歯周病菌が増えることが原因と言われています。
歯みがきをきちんとしていても、メインテナンスでプラークコントロールをしていても、血糖値のコントロールが悪いとたちどころに歯周病は悪化します。そして逆に歯周病が悪くなると糖尿病が悪化することがわかっています。つまり、糖尿病と歯周病は相互に影響し合っているのです。
このため、「おかしいな?」と思った場合には、冒頭のような問いかけをするのです。そして、その結果、やはり、「久しぶりに受診をしたら、血糖値が上がっていました」といったケースが多いのです。
なお、歯周病専門医の間では、
「重症の歯周病患者さんを見たら、糖尿病を疑え」
が常識です。このため、患者さんにこのことをお話しし、糖尿病の発見につながったケースも多くあります。
さて、こうした患者さんに歯周病の治療をすることは糖尿病にも効果的に働きます。
歯周病の悪化によって血糖値が上がる引き金は、歯周病菌の毒素であるエンドトキシンによって産生される炎症物質です。この物質は血糖値を下げるインスリンの働きを抑えてしまうのです。