眠気の原因となる病気で最も多いのは、「睡眠時無呼吸症候群」。呼吸が止まることで脳が覚醒し、睡眠が途切れる。重症だと1時間あたり30回以上呼吸が止まるという。本人は自覚できず、寝室を共にする家族から指摘されることが多い。
「太っている男性や更年期を過ぎた女性で昼間の眠気が強い方は、この病気を疑ったほうがいいかもしれません。若くて細くても下アゴが小さい人は、無呼吸が起こりやすい」(内田さん)
就寝中に足を蹴り出す動きをする「周期性四肢運動障害」という病気でも、眠気は起こりやすい。
「周期性四肢運動障害では、そのたびに脳が覚醒し睡眠が途切れるため、睡眠不足が生じやすい」(井上さん)
これと同じような病気に「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」がある。その名のとおり、眠ろうとすると足先がムズムズする病気で、昼間に眠くなりやすい。
昼間の強い眠気といえば、過眠症も忘れてはいけない。その一つのナルコレプシーは、覚醒と睡眠のスイッチが不安定になる病気。覚醒に関わる「オレキシン」という脳内物質の欠乏で生じる。この物質を突き止めたのが、柳沢さんらのグループだ。
ナルコレプシーは、オレキシンを作る神経細胞を免疫細胞が攻撃してしまう自己免疫疾患である可能性が高いと、別の研究でわかってきた。
「ナルコレプシーは突然寝落ちする睡眠発作と、笑うなど大きく感情が揺さぶられるときにカクッと力が抜ける情動脱力発作が特徴です。眠る前に幻覚を見たり、金縛りになったりすることも」(柳沢さん)
治療は今のところ、覚醒をもたらす薬による対症療法しかないが、オレキシンの代わりに作用する薬の研究も始まっている。
内田さんが最近気にするのは、発達障害が原因と考えられるものだ。海外の調査では、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の人の85%が昼間の眠気や睡眠の質の低下などを訴えたという。
「発達障害には、脳内物質のドーパミンやノルアドレナリンの働きの低下が関係していると言われています。注意力が落ちるだけでなく、覚醒の維持もうまくいかなくなるため、昼間に眠気が出るという説があります」(内田さん)
これらの病気以外に、花粉症に使われる抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)、抗うつ薬などでも眠気をきたすことがある。
いずれにせよ、昼間に強い眠気を何度も感じ、生活に支障が出ているようなら、病院で診てもらったほうがいいだろう。(本誌・山内リカ)
※週刊朝日 2019年2月1日号