「身近な人が亡くなると、悲しみに暮れる間もなく、必要な手続きが山ほど出てきます。何から手をつけてよいのかわからない、という人も多いでしょう。私自身も母を看取った後は、“まさか”の連続でした」
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そう話すのは、『身近な人が元気なうちに話しておきたい お金のこと 介護のこと』(東洋経済新報社)著者で、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(FP)の井戸美枝さん。
井戸さん自身、2017年に実母(享年87)を看取った後、さまざまな手続きに奔走した。
亡くなってから1カ月後、母のメインバンクに連絡すると、銀行口座はすぐ凍結された。葬儀代として手元に250万円ほど置いていたので支払いに困ることはなかったが、医療費、葬儀代、僧侶へのお布施や戒名料など、現金での支払いが多かったという。
「口座の名義人が亡くなったことを知らせると、銀行口座は凍結されて現金を出し入れできなくなります。故人の口座からお金を引き出すと、相続で後日もめることもあります。医療費や葬儀代として、ある程度の金額を現金で用意しておいたほうがよいでしょう」
故人名義の金融資産は、相続財産となる。「故人から頼まれていた」と遺族が銀行の窓口でいくら訴えても、お金をおろせなくなる。相続人の署名と実印が押された遺産分割協議書などが手続きに必要となり、すぐには用意できない。当面のお金は遺族の手持ち分でひとまずしのいだ、という人も多い。
最近はクレジットカードや電子マネーの普及で、大きな現金を手元に置く機会が減っている。万一のときに慌てないようにしたい。
ただ、この点に関しては朗報もある。相続に関する法律が18年に改正され、故人の預貯金の一部を金融機関から引き出せる仮払い制度が生まれる。遺産分割協議が整う前に、相続人がそれぞれ単独で一定の範囲内でお金をおろせる。施行は19年7月で詳細はまだわからない点もあるため、ニュースなどで確認したい。
死後の手続きは、葬儀を中心に1週間後ぐらいまでにすべきことと、少し落ち着いてから確実にすべきことと、二つに分けて考えるとよい。申請するともらえるお金もある。以下、順を追って主な手続きを確認したい。
まず死亡診断書を医師に書いてもらうと、死亡届とともに市区町村役場へ提出する。故人を火葬するには、市区町村から火葬許可証を受け取る必要がある。こうした手続きを代行してくれる葬儀会社もある。
ただ、その葬儀会社を選ぶ際にも、思わぬ落とし穴があることに注意したい。死後の手続きに詳しいFPの畠中雅子さんが言う。
「身近な人が亡くなると、家族は気が動転して手続きどころでなくなってしまうと思います。ただ、看取った病院で紹介された業者に任せっきりで葬儀を行うと費用が高くなることがあります。注意しましょう」