――そんな植木の人格は、小松の芸にも深く根を下ろしている。エキセントリックなコントでお客さんを笑わすだけでは喜劇ではない。笑いの後に涙あり、涙の後に笑いあり。喜劇は見ている人が喜ぶ劇。それが小松の持論だ。
テレビや映画にも出させてもらっていたのですが「やっぱり板(舞台)がやりたい」と思ったんですね、1982年にライブハウスで「一人芝居~四畳半物語」を上演しました。演出は伊集院静さん。当時出演していたバラエティー番組の構成を手掛けていて、そのご縁で参加していただきました。
独身男が酔っ払ってアパートの四畳半に帰ってきて、寝るまでの話です。玄関でつまずいて布団に倒れ込んだり、背広のズボンを寝押ししたり。たばこを吸いたいんだけど、吸い殻しかない。なるべく残っているのをほぐして、新聞紙に巻いて吸い始める。「朝日はまずいなあ」って言ったら、ウケましたね。
日常の切ない悲哀を演じて、クスクス笑ってもらう舞台をやりたいと思ったんです。ところが、やってみたらどっかんどっかん。
また、ひとり芝居をやってみたいですね。今度は独居老人で。女房も死んじゃって、ブツブツ言いながら飯の支度をしたり、「母さん、元気かい」って言いながら仏壇に線香をあげたりする。「あれ、チンはどこ行った?」って、捜しても見つからない。仕方なく鍋を持ってきてコーンって鳴らしてみる。
コメディアンとして、この歳だから伝えられることが必ずあると思っています。どうかひとつ、これからも、長ーい目で見てやってください。(聞き手・石原壮一郎)
※週刊朝日 2019年1月18日号