井戸さんが提案するのは年金の繰り下げ受給。妻の老齢基礎年金の受け取り開始を65歳から70歳へ遅らせると、年78万円から110万円に増やせる。遺族厚生年金を加えると、年200万円、月16.6万円になる。
退職金や親の遺産など多額のお金が入ったら、どう運用するか。前出の加藤さんは「60歳の時点であと30年は生きると考えたら、物価が将来上がったときのインフレリスクにも備えたほうがよいでしょう」と話す。
60歳時点で3千万円の貯金があれば、70、80、90歳までの10年間ずつに分けて運用を考えよう。70歳までに使うお金は流動性の高い定期預金などに、20~30年後に使うお金は利息が少しでも高い個人向け国債や債券中心の投資信託などで運用する方法があるという。
「投資信託で得られた利益は約20%の税金がかかりますが、つみたてNISA(ニーサ)で投資信託を始めると、利益は非課税になります。複利効果も得られ、インフレリスクに対応できます」(加藤さん)
つみたてNISAは年40万円まで投資でき、最長20年非課税になる。投資対象は金融庁の指定した投資信託とETF(上場投資信託)で、元本保証はない。新興国株などに投資するハイリスクハイリターン型は避け、リスクの低い商品を選ぶようにするなど、購入前に商品をよく調べよう。
今や男性の4人に1人、女性の2人に1人は90歳まで生きる時代。入るを量りて出ずるを制する工夫で、資産寿命もしっかりと延ばしたい。(村田くみ)
※週刊朝日 2019年1月4日号‐11日合併号