感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説する。
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ワインはブドウから造られる。そのブドウはワイン産地で栽培される。
■ワイン造りには気温・日照時間・雨量・土壌が大切
ワイン造りに適した、よいブドウの栽培にはいろいろな条件が必要だ。適切な気温(平均10~16度、かつ日内温度較差があったほうがよい)、適切な日照時間(ある程度多めがよく、南向きの畑がよいとされる)、そして適切な雨量(やや乾燥気味がよい)が必要だ。この適切な、というのがやっかいで、要は多すぎても少なすぎてもいけない、ということだ。
土壌も大事だ。ワインの名産地は石灰質の土壌、砂利質の土壌、粘土質の土壌などいろいろあり、それぞれ、その土地の雨量や栽培するブドウとの相性がある。ものの本には「保水性を保ちながら排水性の良い」土壌がよいと書いてある。ここでも「適切さ」が必要だ。まことにやっかいな要求だ。
畑の特性を俗に「テロワール(terroir)」という。フランス語で、表土や底土の性質、排水度、標高や方位、日照度、湿度、風の吹き方などの細かい気象条件(micro-climate)など、多くの要素が「畑の特性=テロワール」に寄与している。テロワールはわかりづらい概念だが、要するにいろいろな条件を加味したワイン造りの土地(とその周辺)の特性ってことだ。
2016年にぼくは「メドック・マラソン」に参加するためフランスのボルドーを訪問した。
ボルドーのワインは有名だが、ジロンド川に流れるドルドーニュ川の右岸(海に向かって右側)ではメルロ中心のポムロールのワイン、そしてガロンヌ川から続くジロンド川の左岸(海に向かって左側)ではカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたメドックやグラーヴのワインが有名だ(いずれも赤ワイン)。