「面白いことにリピーターになったお客さんは、博物誌、文化史などの本にもだんだんと手を出していくんです。猫を多角的に見ることへの貢献度が高い本屋さんの道を歩みつつある。すごいなあと思います」
もう一つ、店主の心意気を感じたのは、開店早々、古書の割合を減らして、利益率の低い新刊本を増やしたことだった。古書を売っても出版業界に貢献できないからだという。
本書には、平日は1日2、3万円、週末は1日6万円くらいの売り上げだと書かれているが、本屋さんを始めたい人たちの希望の星になってほしいと井上さんは話す。
この本は井上さんの20冊目のノンフィクションだ。現在は山谷のルポを執筆中。生活の中から、書きたいテーマが次々に現れるという。
「あと何年できるか考えたとき、やりたいことのほうが多い。100歳まで生きたらいいのかな。この本では、本屋さんじゃなくても、やろうと思ったらできる、ということを感じていただきたいですね」
(仲宇佐ゆり)
※週刊朝日 2018年12月28日号