写真はイメージです (c)朝日新聞社
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熊本医師が考案した健康調査質問表(週刊朝日2018年11月23日号から)
熊本医師が考案した健康調査質問表(週刊朝日2018年11月23日号から)

 最近、何となく気分がすぐれないが、原因がよくわからない。高齢になると、言葉で言い表しにくい体調不良に悩む人も多いだろう。「年のせい」と片付けがちだが、原因はもしかすると、男性ホルモン「テストステロン」の減少と関係あるかもしれない。そんな研究や治療が近年進んでいる。

【札幌医科大学名誉教授が考案した健康調査質問表】

 午後になると、体がだるい。仕事への集中力が続かない。夜はよく眠れない。

 東京都内の60代会社員男性は数年前、そんな症状に悩まされていた。思い当たる原因がなく悩んでいたところ、知人の言葉から、ホルモンバランスが乱れているのでは、と考えた。

 泌尿器科の医院を訪れると、医師が男性ホルモン「テストステロン」の量を測ってくれた。値が低いとわかり、男性ホルモンを月1~2回ほど注射する補充療法を受けるように。2~3カ月経つと数値が上がり、体のだるさなどの症状も改善。仕事にも打ち込める生活へ戻った。

 閉経期の40代後半~50代前半に、女性が更年期障害になることはよく知られている。ただ、男性も同様な症状を訴えるケースがある。「男性更年期障害」とも呼ばれるが、50歳前後でなる女性に対し、男性は60代以降を中心に幅広い年代に現れるのが特徴だ。

 男性と女性に差が出る理由の一つが、加齢に伴うホルモンの減り方の違い。女性ホルモンは50歳前後に急減するのに対し、男性ホルモンはじわじわと減る。更年期を過ぎた60~80代(熟年期)に、男性ホルモン減少の症状が現れる人も多い。

 こうした症状に悩む人を「熟年期障害」と名づけて警鐘を鳴らすのが、男性医学の先駆者で札幌医科大学名誉教授の本悦明医師。男性ホルモンを車のエンジンオイルにたとえ、不足すると車が動かないように体も活力が生まれない、と説く。

 近年話題の高齢者の心身の衰え「フレイル(虚弱)」についても、ホルモンに関連があるとの見方を示す。自著『熟年期障害』(祥伝社新書)で、こう説明する。

<更年期後の熟年期に大きな医学的問題があるのです。多くの人が経験している更年期や熟年期の体調不良・フレイルは、男性ホルモン低下による男性力の衰退が大きな原因だからです>

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