文部科学省で事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回は医学部の学生からの相談に答えます。
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Q:僕は現在、医学部の学生をしています。将来、医師として都会で働くか田舎で働くかで迷っています。
交通面なども便利で生活しやすい都会での生活に魅力を感じる一方で、田舎には医師不足で困っている地域がたくさんあるという課題にも関心があります。僕は地元という地元がないので、そういう地域で働くのもいいんじゃないか、むしろ働くべきなんじゃないか、という気持ちもあり、結局決められずにいます。
人生で何を最優先すべきか。最後は自分で決めないといけないことだとはわかっているんですが……。どう思われますか?(愛知県・22歳・男性・学生)
A:迷っているというのは、やってみたいということの表れだと思いますよ。本当は田舎で働いてみたいんでしょ? だったら、やってみたらいいと思いますよ。いいじゃないですか、田舎暮らし。絶対楽しいと思うよ。
医師不足が深刻な田舎で医者になるということは、本当にありがたがられると思います。それに少ないお金で豊かに暮らせるというのも田舎ならではの魅力です。東京では月20万円の暮らしが、地方では月10万円で成り立ったりする。住環境だって、都会に比べると断然良い。食べ物も隣近所の人が分けてくれたりするから、食費もあまりかからない。そりゃ時々、イノシシやヘビなんかは出るかもしれませんが。
でも僕はこれからの時代、「ここで暮らさないといけない」と一カ所に決める必要はないと思います。特に医者のように手に職があるならなおさら、思い立ったら拠点を変えることができるくらい、需要はあるでしょう。都会や田舎、いろんな場所で柔軟に働いてみるのもありかもしれません。
僕は8歳まで奈良県の田舎で育ちました。それもあってか、草の匂いに山々の緑……自然の多い場所に行くと、なんだかほっとします。東京生活が長くても、根っこは田舎者なんだと思う。