築地市場の豊洲移転から11日で1カ月を迎えた。移転に反対して閉場後も築地で営業を続ける一部の水産仲卸業者に対して、東京都は明け渡しを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。何が起きているのか。
「築地市場は営業しています。東京都は営業中の店を壊すな!」
平日の午後1時、築地市場の正門前からこんな声が聞こえてきた。
フェンスで閉ざされた市場正門前のわずかなスペースに、魚の乾物や瓶詰などを並べる築地の水産仲卸業者たち。都との交渉を進めるために今年6月に結成した「築地営業権組合」の人々だ。現在約150業者が加入している。
共同代表を務める「ムラキ」の村木智義氏は早朝、豊洲市場での仕事が終わってから築地に駆け付ける。
「都は築地市場の廃止手続きをしていない。築地市場内の自分の店にはまだ残置物もある。営業権を持っている我々が自分の店舗に入れないのは明らかにおかしい」
卸売市場法では、一般消費者や関係事業者の利益が害される恐れがない場合に限り、農林水産大臣が中央卸売市場の廃止を認可できるとある。村木氏らの訴えは、業者の間に廃業や営業損失などが出ている以上は築地を廃止できないし、するなら損失補償が必要との主張だ。
「土壌汚染や地盤沈下など豊洲市場の先行きに真剣に危機感を感じ、築地がなくなったら戻る場所がないと心配する業者が多いのです」(市民記者の小山久美子氏)
一方、東京都の主張は「廃止ではなく移転」だ。
「築地市場は豊洲への移転申請を行い、すでに農水大臣から認可を受けています。市場解体には入居者の方々の残置物をどかしてもらうことが必要で、そのために土地と建物の明け渡しを求める仮処分を10月18日付で東京地裁に申請しました。現在も審理が続いています」(東京都中央卸売市場)
農水省に確認すると、「『廃止』は東京都にある11のすべての中央卸売市場を閉じる際の手続きのため、今回は移転認可で対応することになります」(卸売市場室)とし、手続き的には間違っていないという。