そのため都は、入居者が移転で被った損失補填にも一切応じない構え。だが、こうした頑なな姿勢が仲卸業者から反発を買い、「自分たちには築地での営業権があるとの主張を前面に打ち出し、都と対抗するようになっている」(ルポライターの永尾俊彦氏)という。

 豊洲に移転したために廃業した水産仲卸業者は百社ほどいるといわれる。本当に補償する必要はないのか。過去の市場移転では補償を認めた判例があるというのは、築地市場移転問題に詳しい一級建築士の水谷和子氏だ。

「千葉市の中央卸売市場が移転した際に起こされた訴訟では、市の仲卸業者への補償が適法であるとの確定判決が東京高裁で出ています。その上、都は今年4月、『東京都の事業の施行に伴う損失補償基準』を作り、今回のようなケースで事業者に適切な補償することを定めたところ。きちんと対応すべきです」

 その上で、都の仲卸業者の切り捨てをこう断罪する。

「今のやり方は、憲法で保障された国民の財産権を無理やり奪い取っているに等しい。これが小池(百合子)都知事のやり方だと思うと恐ろしい限りです」

(ジャーナリスト・桐島瞬)

※週刊朝日オンライン限定

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