それに、「いい先生」というのは、いま生きている人間とは限りません。僕も、実際に出会った中で恩師と呼べる先生はいないのですが、本の中でたくさんのいい先生と出会い、多くを教わりました。僕が小学生の頃から読んできたのが、仏教と宮沢賢治の本。お釈迦様は常に私の人生の師でした。大学の時にはエーリッヒ・フロム(社会心理学者)や森有正(哲学者)の著作をたくさん読みました。あなたも本を開いてみると、そこに良き先生との出会いがあるかもしれません。
人生に運や不運はつきもの。過去の不運を嘆いていても仕方がない。あなたはこれから、自分の力で人生を変えていけるし、切り開いていけるんです。過去をクヨクヨしてもいいことは何もありません。人間、今ここにしかいないのですから、ここにある今を100%生きるべきです。
あなたはせっかく行きたい大学に行けたんだから、キャンパスライフを思いっきりエンジョイすべき。存分に本を読んだり、旅したりすればいい。そうだ、好きな人はいないんですか? 学生時代こそ恋愛したらいいですよ。「恋愛は人生の秘鑰(ひやく=秘密を解く鍵)なり」と明治の文学者、北村透谷も言っています。
高校の同窓会なんか行く必要ないですよ。私自身、高校時代に悪い思い出はないものの、同窓会には全く出席していません。とにかく、いやな過去はほっといて、今の大学生活を思いっきり楽しんでください。
※週刊朝日 2018年11月16日号