文部科学省で事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回は進学校だった高校が嫌いな20代男性からの悩みに答えます。
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Q:僕は自分の母校(高校)が大嫌いです。母校は進学校に分類される県立高校で、先生は生徒の進学実績が一番大事。勉強ができる子がかわいくて仕方ないといった感じでした。僕は勉強してなかったので成績もあまりぱっとせず、当時は相手にされていませんでした。
僕は浪人して、その間に勉強しました。偏差値を上げて大学に合格。今は行きたかった大学に通えています。高校の先生たちには報告していません。でも心のどこかで本当にそれで良かったのかなと思う自分もいて、自分の器の小ささを感じて、憂鬱な気持ちに襲われる時があります。こんな僕の考えは間違っているのでしょうか?(東京都・20歳・男性・学生)
A:自分が悪かったなんて思う必要は全くありませんよ。学校があなたに合ってなかっただけで、むしろ学校が悪かったんです。そういう人って、たくさんいると思いますよ。
あなたの高校のように、偏差値の高い大学に卒業生をたくさん入れることが学校の評価を上げることにつながると思っている先生が多いのは大問題です。ペーパーテストの点数だけに捉われる偏差値教育は、本当の教育ではありません。テストの点数だけいい人間なんて、結局ろくな人生は送れませんよ。有名大学の有名学部出身の人って、いばっているだけでまともに仕事ができない人が多いんです。文部科学省にもそういうのがたくさんいました。
あなたの高校生活は、決して無駄になってないと思います。そんなに暗澹たる思いで高校生活を送っていたのに、不登校にもならず、中退もせず、とにかく通ったわけですから、それだけでも自分をほめていいですよ。疎外感や憂鬱な気持ちを自ら経験したこと自体が、あなたの人生にとって大きな財産になっていると思う。残念ながら、政治家をはじめ、世間の大人の中には、そうした人の痛みがわからない人もいますから。