歯並びやかみ合わせをよくするための歯科矯正治療。歯周病にならないために行われる場合もあります。矯正治療をしたほうがいいケースとはどのような場合でしょうか? 歯周病で抜けそうな歯に矯正治療を行っても問題はないのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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歯周病の原因である歯周病菌は歯についた食べかすをエサにプラーク(歯垢)を作ります。歯並びが悪く、歯ブラシやフロスが届きにくい場所はプラークがたまりやすく、歯周病になりやすいことが明らかです。
なかでも「叢生(そうせい)」といって、歯が重なり合ってデコボコになっている部分は特に歯周病になりやすいところです。ちなみに、「八重歯」も叢生の一種です。
プラークがたまりやすい部分は歯周病の治療をしても、再び症状が起こりやすくなります。再発を繰り返すうちに歯周病が進行するため、清掃しやすい歯並びにすることを目的に、歯科矯正を行う場合があります。
もう一つ、歯周病で矯正治療が勧められる場合は、かみ合わせている歯の一方がもう一方の歯に強くあたっている場合です。歯に過度な力がかかり、揺さぶられるとその刺激によって歯の土台となる歯槽骨が溶けてしまいます。
歯槽骨が減っている歯は歯周病になりやすく、すでに歯周病がある場合は重症化の要因になることが知られています。
矯正治療は子どものもの、と思われがちですが、大人でも可能です。矯正治療は歯槽骨の代謝を利用して歯を動かす治療であり、骨の代謝のさかんな成長期(15歳くらいまで)に行うと早く、スムーズにできることは確かです。
しかし年をとっても代謝はゼロになりません。また、歯周病の患者さんはすでに歯槽骨が減っていることなどの理由で、健康な歯に比べ、弱い力で歯が動きやすいことがわかっています。つまり、矯正に適しているのです。矯正後は歯の揺れを安定させるためにクラウンやブリッジなどで固定することもあります(進行した歯周病で歯槽骨が大きく失われているような場合など、矯正治療ができないこともあります)。