「その年のナンバーワン評価の選手を獲る」という方針は今年も貫き、根尾をクジで外したとはいえ、甲子園のヒーローとなった152キロ腕を獲得した。

 2位は花咲徳栄の野村佑希。昨夏に日本一を経験し、新チームではエース番号を背負っていたが、高校通算58本塁打の長距離砲として、プロには挑戦する。

 そして高校1年の夏から甲子園を経験した横浜の万波中正を4位で指名。さらに、大阪桐蔭のエース右腕柿木蓮を5位で指名したのである。

 日本ハムの大渕隆スカウトディレクターは、他球団のスカウトと群れることはなく、いつもひとり、離れたところから選手を見守っている。試合中のプレーだけでなく、野球と向き合う姿勢や、チームメイトとの関係性までチェックし、選手の内面を把握していく。

 他球団の指名状況によるとはいえ、万波と柿木に対する下位指名は、彼らの性格からして最も発奮させ、プロの舞台で一皮も二皮もむけてもらおうという狙いがあるのではないだろうか。

 万波はこの夏を前に、一度、メンバーから外されている。その「干された」経験が、夏の大会での爆発を生んだ。そして柿木は、佐賀から屈指の名門校に加わり、根尾や藤原といった“意識高い系”球児と練習に励むことで、野球に対する頭も培っていった。

 大阪桐蔭では、夏までは実質、2年連続で選抜の胴上げ投手となった根尾がエース格だった。根尾に加えて、このドラフトでも巨人に4位指名された横川凱と修練することで、最終的には大阪桐蔭のエースの座を奪った。最初から大きな期待を背負わせるよりも、仲間の背を追わせることで、大きく成長していくタイプの選手である。

 そんなこの夏の優勝投手が、5位で残っていたのだ。日本ハムにとっては、まさに、我が意を得たり、の指名ではなかったか。単に甲子園のスターを集めただけではないところに、日本ハムのドラフト戦略の妙がある。

(ノンフィクションライター 柳川悠二)

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