デジタル版への完全移行の前後1年間を分析した結果、読者数こそ大きな変化は見られなかったものの、「読む時間」が7割以上減少していたことが示された。これは主に紙版の読者を失ったことに起因するもの。紙版の読者の半数以上がほぼ毎日、平均して37~50分かけて新聞を読んでいたのに対し、デジタル版の読者は月に2回程度、平均6分しか時間を費やしていなかったためだ。
紙であれば読者の注意はすべて紙面に向けられるが、デジタルであればリンクを伝って別のメディアに流れていってしまう──その違いが如実に表れた結果と言えるだろう。
サーマン教授はこの点についてこう指摘する。
「デジタル版に完全移行したことで、インディペンデントは読者からのアテンションを失った。同紙はいまやむさぼり読まれるものではなく、ちらりと読まれるだけの存在になってしまった」
インディペンデントのデジタル化が示すのは、紙はいまだ“真剣に読まれるメディア”であり、ウェブは“ながら読みされるメディア”という事実だ。紙とウェブの両方を維持することは、メディアの存在感を維持しつつビジネス的な拡大を目指すという意味で、今後重要な戦略になるのかもしれない。
※週刊朝日2018年10月26日号