死亡リスクのほかに後遺症の危険性も高いくも膜下出血。脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)が破裂するまで基本的に無症状だが、わずかな予兆も。週刊朝日ムック「脳と心臓のいい病院2019」から、その実例と見抜くポイントを紹介する。
脳動脈瘤の破裂によって引き起こされる、くも膜下出血の症状として、よく知られているのが、今までに経験したことのない激しい頭痛だ。ただ、時にはそれ以外の症状が生じることもある。
加藤公子さん(当時67歳、仮名)は、朝に友人の家の前で話をしていたとき、「プツン」と、右の首の後ろがはじけるような感じを受けた。帰宅して横になっていたところ、連絡を受けて帰宅した夫が救急車を呼んだ。救急隊が到着した時点で意識は朦朧(もうろう)としており、病院に到着するころには、外部からの刺激でやっと目を開ける程度の意識障害をきたしていた。
診断の結果は、くも膜下出血。左の内頸動脈(けいどうみゃく)と後交通動脈の分岐部に生じていた7ミリ大の脳動脈瘤が破裂したためだった。場所や入り口の広さと大きさから、開頭してネッククリッピング術がおこなわれた。退院した今では後遺症もなく過ごせているという。
加藤さんのような症状は決して珍しくないと、埼玉医科大学国際医療センター脳卒中外科教授の栗田浩樹医師は話す。
「軽症の場合、『何かが頭の中ではじけた感じ』や、『頭が一方向に引っ張られる感じ』などがして、そんなに頭痛はしなかったと話す方もいます。おそらく、出血した瞬間の頭蓋内圧の上昇や、化学的刺激が原因ではないかと考えられます」
なお、破裂前の脳動脈瘤は基本的に無症状だ。ただ、まれに脳動脈瘤が神経を圧迫し、何らかの症状を引き起こすことがある。特に、まぶたの動きが悪くなる、「動眼神経麻痺(まひ)」が急に起きたときは要注意だ。その際、多くは物が二重に見える複視を伴うため、異常に気づきやすいという。動眼神経麻痺のうち、10~20%は破裂寸前の脳動脈瘤が原因だと、栗田医師は語る。