この寄与分を主張して、認められれば、親の介護のきょうだい格差に対する不満は解消されるだろう。ただし、認められるためには、介護が通常期待される義務ではなく、特別な貢献である必要がある。親子の扶養義務の範囲内の行為であるとされれば、寄与分が認められない。さらに、介護という貢献を、金額に換算して示さねばならない。

 介護における具体的な寄与分を決める際には、介護保険の介護報酬基準が一つの目安になる。

「ただし、介護報酬基準額(日当)は、看護や介護の資格を有している専門家へ支払う報酬。そうでない人が介護をした場合は、基準額の70%程度が平均的な数値です」(福田さん)

 2007年の判例では、認知症の親の介護の寄与として、「1日8千円程度×3年間=876万円」と評価されたケースもある。

 だが、主張した寄与分が認められるケースは、非常にまれ。

「介護報酬基準はあくまで一つの目安。算定根拠は法律には定められていないため、難しいのです」(福田さん)

 つまりそれだけ、親の介護への貢献は測りにくい。明らかな格差があったとしても、それを証明するのが困難なため、冒頭の山下さんのように不満をのみ込んだ結果、きょうだいが決裂するケースが後を絶たないのだ。(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2018年9月28日号より抜粋

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