

安倍晋三首相の優勢との見方が強い自民党総裁選。ジャーナリストの田原総一朗氏は、自民党の劣化であると強く批判する。
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20日の自民党総裁選をめぐって、安倍晋三首相と石破茂元幹事長が、激しい一騎打ちを繰り広げている。
ただ、この一騎打ちがいまひとつ盛り上がらないのは、初めから決着がついてしまっているからである。両者の議論がいかに激しくても、その議論によって決着がつくのではなく、初めから安倍氏が勝つことが決まってしまっているからである。
細田派、麻生派、岸田派、石原派など、ほとんどの派閥が安倍氏に投票することを決めており、石破氏に投票するのは石破派の20人と竹下派の参議院議員くらいしかいない。議員の数ではせいぜい50~60人どまりであろう。2012年の総裁選では、党員票では石破氏が165票で、87票の安倍氏を大きく上回っていたのだが、今回は党員票でも安倍氏が6割近くを獲得するはずである。
石破氏が総裁選に立候補したことで、安倍内閣の問題点を国民に示したことに少なからず意味があった、と私は捉えている。
だが、初めから安倍氏の勝利という決着がついていたのを私は自民党の劣化だと断じている。野党は以前から弱く、政権奪取の野心も意欲も持っていなかったのに対して、自民党内での論争はダイナミックで迫力があった。
だが、選挙制度が変わって小選挙区制になったことで、政界のありようが大きく変わった。小選挙区制になり、一つの選挙区から一人しか立候補できなくなると、執行部の承認が得られないと公認されなくなる。つまり、立候補できなくなるわけだ。
そこで、立候補するために何としても執行部に気に入られるようにする。言ってみれば、執行部に忖度せざるを得なくなる。
それでも、中選挙区制で当選したことがある議員が少なからずいたころは、首相に抵抗する議員も結構いた。しかし、現在では小選挙区制で初当選した議員がほとんどである。そのために多くの議員が安倍氏のイエスマンになっている。だから安倍氏が決めたことに抵抗する議員はあまりいなくて、自民党内部での議論というものが起きなくなっている。