かつての自民党ならば、森友・加計疑惑などについて、自民党内部で強い異議申し立てが起きていたはずである。だが、そうした異議がまるでなくなり、自民党内部の空気がたるんでいる。緊張感がまるでない。

 私が第2次安倍政権の最初の幹事長であった石破氏に「自民党議員たちのほとんどが、安倍首相のイエスマンになり、論議も起きなければ緊張感もない。これは自民党の劣化ではないか」と問うと、石破氏は困惑しきった表情で、大きくうなずいた。そこで、「中選挙区制に戻せばどうか」と問うと、「それは反対だ」と答えた。「なぜか」と問うと、「中選挙区制だと1回の選挙にどうしても1億数千万円必要となる。そのためには表に出せない金をかけなければならない。だが、小選挙区制だと金がかからない。だから中選挙区制には戻したくない」と言うのである。同じ質問を2人目の幹事長となった谷垣禎一氏にもぶつけた。谷垣氏も自民党の緊張感のなさ、たるみについては私に同意した。だが、中選挙区制については同じ理由で反対した。

 安倍首相のイエスマンになった自民党の幹部たちは、この国をどうすべきか、責任を持って考えてはいるが、いわば安倍首相任せの状態だ。このことに私は強い危機感を覚えている。

週刊朝日  2018年9月28日号

[AERA最新号はこちら]